万年筆インクで絵を描く際、「重ね塗り」や「混色」は少しハードルの高いイメージがあります。色彩理論は、経験値がないとなかなかわかりづらいところはありますよね。とはいえ、僕自身はそこをなるべくシンプルに手早く描きたい!と思っておりまして、今回はそんな描き方を紹介します。

上の写真はは万年筆インクで描いた「紫陽花」です。一輪一輪、少しずつ色が違いますね?でもメインで使用している青いインクは「すなおいろ・靑」一色のみなのです。違うのは下地に使用しているインクで、僕はこの下地に使用する色を「出汁」と読んでいます。同じ具や調味料を使用しても出汁が違えば風味が変わる、料理のようなイメージをもつと、混色や重ね塗りも身近なものに感じられるものです。

まずは出汁をとりましょう

今回「出汁」色として選んだのが上記8種類のインクです。グレー系、セピア系、アンバー系、ブラウン系あたりのインクは下地として使い易いですね。

しっかりと深い色まで出したいのと、じっくりとぼかしたいので紙は丈夫でインクの溶けやすい「ワトソン紙」を使用しました。

紫陽花は花がわさわさと固まっているとより紫陽花らしくみえます。直径4〜5cmの円型がぎゅっと詰まっているような感じに、ガラスペンでグルグルと線をのせていきます。

各花を水筆で「あえて色ムラができるように」溶かしていきます。「色ムラ」というのは塗り残しや濃いところ、薄いところがある状態のことをさします。インクによってはガラスペンでひいた線がくっきりと残ってしまっていますが、気にせず色を溶かしましょう。

その後、しっかりと紙面を乾かします。ワトソン紙の場合、水やインクを沢山吸収するので乾くのに時間がかかります。ドライヤーを使用すると時短ができます。

着色。出汁の上に紫陽花の色をのせていきます。

(1)ランダムにすなおいろ・靑のインクをのせます。靑は下地の上にまんべんなくグルグルと線を引いていく感じでOK。あまり深く考えず、ひたすらインクをのせて楽しんでください。

(2)花びらをイメージして水筆でぼかしていきます
グルグル線の上に水筆で小さな丸を敷き詰めていきます。少し隙間が空くくらいで丁度よいです。この小さな丸が、後ほど「花びらっぽい感じ」を演出してくれます。

(3)色抜き[01]たっぷりと水を含んだ水をのせます。
水筆にタップリと水を含ませ、各花の上部に雫を落としていきます。雫と雫の間は隙間が残るようにしておきましょう。ここで我慢の10秒。落とした雫にインクが染み出してきます。

(4)色抜き[02]ティッシュで雫の水分を吸い取ります。
インクが雫の中に溶けてきたなぁっていうタイミングでティッシュを置いて、水分を吸収しちゃいます。

(5)色抜き[03]ティッシュを離します。
すると溶けたインクが水分ごとティッシュに移り、紫陽花に光が当たっているような表現になります。立体感が生まれ、紫陽花のこんもりとした球形に近づきます。

他の花にも同様に「色抜き」をかけるとこんな感じ。

(6)葉を加えて完成。
花の下部に線画で葉を加えました。仕上げの加工として、水筆で各花の色を抜いた部分と抜いてない部分をなでるように馴染ませると、全体的に表情が柔らかくなります。

インク(下地)

インク(花と葉)

MUSE ホワイトワトソン紙

まとめ

いかがでしたでしょうか?ハードルの高そうな混色や重ね塗りも、「出汁をとって色をつける」という考え方ひとつで色の選び方や組み合わせをシンプルに考えることができまます。また、色合い自体も、出汁をとることで簡単に深みや重厚な表現にしていくことができるので、楽しみ方が色々と広がっていきますね。

文字に使うインクとしてイエロー系はあまり人気がないんですけれども、こと絵を描く上では汎用性が高く、便利です。今夜は昆布出汁にしようか、それとも鰹出汁にしようか…豚骨もいいけど鶏ガラも捨てがたい…みたいなノリで、どうぞお楽しみください。