食欲とインク欲は良く似ている…と思いませんか?

万年筆インクって「美味しそう」ですよね。
いや、誤解されそうなのであらかじめ言っておくと飲んだことはありません(笑)
でも美味しそうじゃないですか?
香ばしくって、透明感があって、やさしくて、艶がある。
サラサラと涼しげな書き味のものもあれば、
のっぺり、まったりと絡みつくように伸びていくインクもある。
どうにも万年筆インクというのは僕の食欲をそそるんですよ。
そして困ったことに食欲って際限がないじゃないですか。
いつだって美味しいものは食べたいし、色んなものを食べてみたい。
そう、インク欲も同様に際限がないんですよ。
だって「美味しそう」なんだもん。
どんどん欲しくなるし使いたくなる。

僕は万年筆で絵を描く時、
モチーフによってだいたいそのインクの役割を決めています。
こんがりとしたパンの焦げ目、
レタスやキュウリ、イチゴやトマト、生クリーム、
スポンジやパイ生地、チョコレート、
グラスの輪郭、しっかりと主線…などなど、
それぞれにどのインクを使おうか、最初にアタリをつけておいて、
そこに色を足したり、引いたり…みたいな感じです。

このコラムではそのインク達の中で、
とりわけレギュラー枠で活躍している子達を紹介していきます。
ついでに万年筆画の技法紹介…(調理方法?)もちょっとずつ、
スパイス程度に触れまして、
そう、インク版の「グルメレポート」や「料理番組」に近いノリで
記事にしていこうかと。

手始めに今回のテーマは「アイスコーヒー」。
黒々とした深い色合いの液体は環境光を取り込み
茶からオレンジ、そして琥珀色へ透明感のあるグラデーション…。
氷は輪郭をできるかぎりぼかしてほどよい不透明感が
表面の曇ったグラスの表現に繋がります。
うーん、なかなかに素敵なイラストですね!(←自画自賛!)

そして光の暖かさを殺さずに輪郭線を演出しているのが
エルバンの「ビルマの琥珀」です。
今回は主線から下地へと全ての要素に絡んでいます。
ここがレストランと考えるなら「ビルマの琥珀」は
「店内の落ち着いた照明」の役割を果たしていますね。
ああ、なんて素敵なインクであることよ。

ささ、どうぞみなさんも召し上がれ!冷たいうちに。
美味しそうなインク」を楽しみましょう。

万年筆で絵を描くための基本道具

インクがあっても使い方がわからければ楽しさも半減しちゃいますから、
万年筆画に必要な道具や技法もちょっとずつご紹介。

初回は道具。
こちらが僕が万年筆で絵を描くとに用意しているワンセットです。

  • 万年筆:好きな軸でOK。
  • 水筆:インクをぼかすときに使用する。メーカーは問わず近所の画材店や文具店で入手できるものでOK。軸の中には水は入れない。
  • :少量で良いので外出先などで描く際は小さなタッパーなどに入れていくのも良い。
  • ティッシュ:水筆の水を拭う際に使用する。なんでもOK。
  • :物によっては水筆でインクが全くのびないものがある。オススメは『グラフィーロ【神戸派計画】』という万年筆専用紙。インクの発色がよく、よく伸び、かつ水筆を多用しても紙がたわみにくい。

今回のPICK UPインク
J.HERBIN(エルバン)トラディショナルインク【 ビルマの琥珀 】

明るいのに控えめ、パンの焦げ目や食べ物の輪郭線に大活躍

琥珀色、アーバン系インクと言われる、イエローからゴールドあたりの色彩を表現します。エルバン社の水溶性インクは全般的に少し水っぽくて、サラサラしてて、色もやや薄めに発色します。実は「水っぽく」や「やや薄め」という性格は絵を描く上で大変重宝します。
特にこの【ビルマの琥珀】は、明るい色でありつつも自己主張をしすぎない程よさをもっていて、他の多くの色と相性が良いことも特徴のひとつ。「主線(絵の輪郭など、メインになる線)」としても「下地(画面全体に色を置いて全体の色調を整える役割)」使えます。食べ物などできるだけ画面を明るく見せたい時には第一選択になるインクです。