こんにちは。工作師です。

ひと雨ごとに涼しくなってくる季節ですね。
茶色の季節、秋はもうすぐそこです。

皆さまは、お気に入りのペンを磨くときに何をお使いですか?
今回は私が10年くらい使い続けている「つやふきん」を紹介いたします。

つやふきんとは、140年の歴史を持つ高級艶出しふきんです。

つやふきんを一見すると、どこにでもあるオレンジ色のタオルに見えます。
しかし、このタオルには「イボタロウカイガラムシ」から分泌される、高級な「イボタ蝋」が染み込ませてあります。

イボタロウカイガラムシ。。。
実は「イボ太郎」ではなく、「イボタ蝋」なのです。

イボタ蝋は日本では最高級の蝋として扱われ、古くは江戸時代、仏壇、ふすまのレール、桐タンス、柱や梁などをみがくのに用いられていたようです。

つやふきんは、銀座一丁目の煙草店「佐々木商品」で販売されており、この店でしか手に入れることができません。
佐々木商店は、明治初期創業の140年以上の歴史を持つ煙草屋の老舗です。どこにでもある普通のたたずまいの煙草店なので、意識しないでいるとつい通り過ぎてしまいます。

なぜ煙草店でつやふきんを販売しているのでしょうか。
それは、パイプを磨くのに最適なふきんだからです。パイプの材質はブライヤーなどの木材、エボナイト。つまり、万年筆の軸の材質と同じです。したがって、つやふきんは万年筆を磨くのにも最適なのです。

万年筆を磨くとき、磨き用クロスを使うことがありますね。磨き用クロスは確かにピカピカになるのですが、研磨剤をつかって研磨しています。小鹿の皮を油なめししたセーム革も、結局は研磨しています。研磨とは表面を削り取って凹凸をなくす手法であるため、表面加工を傷つけてしまうことがあります。

つやふきんは、蝋を付加して表面を滑らかにします。つまり、表面加工を傷つけることはないのです。

万年筆の軸にはエボナイトや木材だけでなく、樹脂や金属を使ったものがあります。つやふきんは蝋を付加して磨くため、あらゆる材質のものに用いることができます。

私は革で作られたものも、つやふきんで磨いています。金属に用いた場合、錆止め効果があるようです。すべてはイボタロウカイガラムシのおかげなんですね。

つやふきんを使うとき、ひとつだけ注意点があります。
つやふきんは洗濯をしてはいけないのです。

なぜなら、洗濯によってつやふきんに染み込ませたイボタ蝋がなくなってしまうからです。こうなると、単なるオレンジ色のタオルになってしまいます。

つやふきんの価格は1枚1080円。他の磨き布に比べると高価です。しかし、つやふきんは毎日使っても2~3年、艶出し効果があります。そう考えると決して高価ではありませんね。実際につやふきんで万年筆を磨いてみます。

おや?
それほど艶がでたようには見えません。

磨き用クロスやセーム革では即効性があるのですが、つやふきんにはそれがありません。つやふきんは、毎日磨き続けると1週間ほどで効果が表れます。うまく表現できませんが、柔らかくて暖かい艶です。磨けば磨くほど、艶がでてきます。

こちらは20金の金属軸。
手垢で汚れていましたが、こんなにピカピカになります。

。。。

私にとって、万年筆は愛着を持って使う道具です。
使っていくうちについてしまう傷も、愛着を持って使った証だと思うのです。つやふきんは研磨するものではないため、傷そのものをなくすことはできません。しかし、その傷すらも愛着に変えてしまう働きがあるような気がします。

磨くという行為は、愛着を持って使う道具に対する「いたわりのようなもの」なんだろうな。。。
来る日も来る日も万年筆を磨きながら、私はこんなことを考えています。

( ̄▽ ̄)T