明けましておめでとうございます。
今年も本コラムにておつきあいのほど、
何卒よろしくお願い申し上げます。
そろそろ松の内を過ぎる頃とはなりますが、
当コラムとしては、今年初めのおめでたい回ですので、
今日は、ちょっと改まって参りたいと思います。
私にとって、この条件を満たすペンといえば、
契約書に署名をする際に使う万年筆が
まさにソレに当たります。
特に、通常3ヶ月ほどかかる単行本の原稿を書き上げ、
間もなく出版されるというときに版元と交わす契約書では、
その「おめでたさ」と「改め具合」が MAX レベルに達します。
私は文章を書くのは好きですが、好きであっても、
1冊の本を書くのは、容易なことではありません。
時に「本を書くのは、絶対これで最後にしよう!」などと
思いながら書くこともあるのです。(笑)
3ヶ月間、このように思ったりしながら、
やっと書き上げた原稿を版元に提出した後、
編集さんと校正作業のやり取りが何度か行われます。
このときは、編集さんとお互いの「個体差」により
様々なバトルが繰り広げられることも……。(笑)
そして、書籍のタイトルやカバー、発行部数、
売価などが次々に決まって、
ようやく契約書を手にすることができるのです。
この時点で、最初に出版依頼をいただいてから
かなりの時間が経っているので、
個人的に感慨深いものがあるのですが、
それより、途中ギブアップすることなく、
無事1冊の本を世に送り出せることが素直に嬉しい。
そして、契約書を一覧し、恍惚とした達成感に浸りながら、
住所と名前を大切な万年筆で記入するのです。
乱暴な話、住所と名前を書くだけなら、
粗品でもらったボールペンでも一向に構わないのです。
でも、敢えてこの万年筆を使いたいという気持ちは、
説明しなくても皆さんにはわかっていただけるように思います。
執筆という長丁場で発生する私の様々な思いを、
その一身に集めて受け止めるだけの技量や品格が
この万年筆には備わっていると思うのです。